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■選手の数だけドラマがあれば、ファンの数だけドラマがある


皆さんは、独自の応援スタイルを持っていて、その球団のファンに一目置かれている人物に出会った事はないだろうか?不定期連載「カープファン列伝」は、そんなファンに取材をし、独自の美学やカープに対する熱い思いを語ってもらう企画だ。



■「ビジター球場でカープファンが働く」ということ

皆さんは球場でビールを飲むとき、どこで、誰から買いますか?
球場観戦によく行く人は、「この球場では、いつもあの売り子さんにビールを頼む!」と決めている人も多いのではないだろうか?

基本的に、その球場で働いているスタッフは、ホームチームのファンである場合が多い。

では、「ビジター球場でカープファンが働く」と、どんな物語が生まれるのか?

今回は、神宮球場と東京ドームで「前田智徳タオルの売り子さん」として有名だった「ありささん」に取材をし、ビジター球場でのカープファンとの交流について語ってもらった。




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■「前田智徳タオルの売り子さん」ありささんに質問


【1】カープファンになったきっかけ

小さい頃から父親の影響で野球を見に行くことは多かったのですが、“野球が好き”という感じで特定の球団のファンではありませんでした。

もともと前田さんや緒方さんは好きで、たまーに球場に見に行ったりはしていましたが、ここまでカープにはまったきっかけは高校野球で地方予選から応援してきた選手と甲子園ですごく記憶に残った選手がカープに入団したことですね。
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【2】なぜ球場で働こうと思ったのか?


とにかく野球が好きだから、何か野球に関わりたいと思ったのがきっかけです。
子供のときから球場に行っていて、ビールのお姉さん達はすごいなーという漠然とした憧れはあったので、大学の授業が落ち着いたところで東京ドームの売り子に応募しました。

神宮を始めたきっかけは、売り子が楽しすぎて東京ドームだけじゃ物足りなくなったからです。笑



【3】球場で売り子をやっていて楽しかったこと


とにかく大好きな野球の近くで働けることと、いろんな球団のファンの方とお話できることです。

特にカープ戦のときは応援して、喜んで、悔しがって…というのをお客さんと一緒にやっていたので、働いてるというよりはカープの応援にきた感覚でした。もちろん、ちゃんと売り子の仕事はしてましたけどね!笑



【4】球場で売り子をやっていて大変だったこと


大変だったこと…体力的なこと以外だと思い浮かばないですね。

屋内球場はある程度空調がきいていますが、屋外球場は夏だと夜でもまだまだ暑いので、15キロ近くある樽を背負って3~4時間ずっと階段の昇り降りをするのは慣れるまでなかなか大変でした。

あ、あとは天候に左右されることですね。開幕直後はまだ寒くてビールが売れなかったり、夏は売れるけど体力的に厳しかったり、雨が降ると全く売れなくなったり…でもそれを全部ふまえても大変だったというより楽しかったという思いの方が強いです。
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【5】「神宮球場の売り子」と「東京ドームの売り子」の仕事の違い


根本的な部分に違いはありません。

ただ、東京ドームは自分が売りに行っていいエリアがきっちり決まっているのに対して、神宮球場は内野・外野という大まかな分け方しかないので、売り方だったり声の掛け方は少し違いましたね。

あとは売ることのできる時間が違いました。東京ドームは6時開始の試合だったら5:45から8:45か8回裏終了の早い方と決まっているのに対し、神宮球場は好きなときに出てよくて、終わり時間も決まっていないんです。

だから好きなときに帰れると言えば帰れるんですが、私の中のルールとして、試合終了までいようと決めていました。だってビール飲みたいときに売り子が来なかったら悲しいじゃないですか!試合が進むとやっぱりビールも売れなくなってくるんですが、それでも1杯でも2杯でも飲みたいって思うお客さんがいる限りは絶対帰らない、と決めて働いていました。






【6】カープファンの売り子としてこだわっていたこと

カープ戦のときはとにかくカープを全面にだしてましたね。そうするだけで自分の気持ち的にもテンション上がって頑張れそうな気がするんです。前田さんのタオル、赤い花、シュシュもピアスも全部赤で統一していました。球場に着くまでは完全に観戦しに来た人たちに混ざってたと思います。笑

あとこれはカープファンとして、とは少し違うかもしれませんが、来ているお客さんの邪魔をしないように気を付けていました。たとえば、最前列に降りたときに投手が投球動作に入っていたら立たない、など普段野球観戦に行って気になったことをしないように自分なりにルールを決めていましたね。

もちろん完璧ではなかったと思いますが、これが野球ファンとしてのこだわりでしたね。
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【7】ありささんのことを「カープファン」だと知ったお客さんの反応

多くのお客さんはタオルを見て、

「お!前田じゃん!」

と気付いてくださいました。そこから話が弾むことが多かったです。

「どうせ営業用でしょ?」とか「明日は巨人ファンなんでしょ?」とか言われることも多かったですが、カープの話をし出すと止まらなくなるので、最初は営業だって言っていたお客さんにも試合途中からは“前田さん”って呼ばれだしたこともありました(笑)

売り子をしていると基本的にはグラウンドに背中を向けているので、試合はほぼ見られないんですが、スタンドを歩きながら応援歌を歌ったり、得点したら宮島さんをお客さんと一緒に歌ってハイタッチしたり、ビールついでる間「ここで見てていいよー」って言ってくださる方も多かったので、他のカードより野球を見ていたイメージがありますね。

カープファンのお客さんは他球団よりも熱心な方も多いというか、野球に詳しい方が多いので話していてとても楽しかったです!
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【8】神宮球場で行われる大学野球の魅力とは?

なんでしょう…高校野球ともプロ野球とも違うんですよね、大学野球って。

客層はその大学の出身の方が多かったり、試合に出ている選手の友達や家族がきていたり。プロ野球より気軽に来ている人が多いのかな、と思います。でもその分、応援の一体感がすごいんですよ。やっぱり母校とかって応援したくなるじゃないですか。だからみなさんついつい応援に熱が入るんですよね。

あとプロ野球の応援は大学野球からきている場合も多いので、聞き覚えのある曲が聞けるかもしれません。カープのハイパーユニオンも元は明治大学からですもんね。

あと、私は野球経験者でもないのでなかなか技術的な面ではわからないことの方が多いですが、高校野球に比べて急にレベルが上がると思うんです。そんな中高校野球で活躍していた選手がいたり、来年はプロにいくかもしれない選手がいたり。試合の進みも早いしチケットも安いし、早く球場に行けばいい席で見られるし、野球ファンにとってこんなにいい環境ってないんじゃないでしょうか!
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【9】大学野球で応援していた選手がドラフトで指名されることについて、またその選手がプロ野球で活躍することについてどう思いますか?


今のカープでいうと、下水流さん、九里くんあたりが大学時代から応援してきた選手なんですよね。下水流さんは大学4年でプロから指名されずに社会人に行って、そこからカープに指名されてっていう一連の流れをずっと追ってきてるんです。だから指名されたときは本当に嬉しかったですし、さらにそれがカープだったのでしばらく1人で騒いでいました(笑)

大学野球ではレギュラーでずっとやってきた選手でもプロでいきなり活躍できる選手ってそんなに多くないと思うんです。だから2軍の試合を見に行ったりもしますし、アマチュア時代から見ていた選手が1軍にあがって活躍しているところを見ると本当に嬉しいですね。

「頑張ったね」「これからも頑張ってね」っていう気持ちで見てるので、よく「お母さんみたいだね」って言われます(笑)




【10】球場で働いてみたいと思っている後輩達へアドバイス

まず、よくどうやったら売り子になれますか、と聞かれるのでそこを少し。

だいたいオープン戦が始まる前後のタイミングで球場ごとに売り子の募集がかかり始めます。東京ドームも神宮球場も基本的に売る銘柄ごとに募集がかかる感じですね。そこから面接とか研修をして、オープン戦かシーズン開幕から出勤します。

売り子って見た感じ華やかな印象を受けますが、実際はかなりきついです。体力的にはもちろん、売れなかったりすると色々考えることも多くて。でも少しでもやってみたいと思ったらぜひ思い切ってやってみてください。普段野球観戦に行くのとは全く違う面を見られると思います。

偉そうなこと言ってあれですが、私は売り子をやってなかったら出会ってない人もたくさんいたと思いますし、本当に売り子をやって良かったと思ってます!
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【11】ありささんにとって広島東洋カープとは?

影響を与え続けてくれる存在

ですかね。

一言で表すのは難しいですが…

月曜日やシーズンオフになるといつもテレビ何見てたっけ?ってなるぐらい、毎日野球しか見てないんですよ。仕事が終わって帰ってカープの試合をテレビで見て、一球一球に一喜一憂して、関東で試合があるときはなるべく行って、広島に遠征もして…そんな毎日ですね。社会人になったら落ち着くのかと思ってましたが全然そんなことなかったです(笑)

カープを好きにならなかったら売り子をすることもなかっただろうし、売り子をしなければこんなに楽しかったと思える経験もなかっただろうし、そう考えると本当にいい影響を与えてくれてるなって思います。

私が頑張って応援してもたくさんいるファンの中の1人だし、それが何かに直接繋がってくることはないかもしれませんが、球場に行くたびに新しい発見があったり、出会いがあったり、そんな素敵な「場」を与えてくれるカープをこれからも全力で応援して行きたいです!
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~取材を終えて~






■学生野球から応援していた選手がドラフトで指名されるということ

ありささんの事を知ったきっかけは当サイトを開設する前の去年の開幕直後、試合中に何気なく見かけたツイートからだった。

その日の先発はドラフト2位、ルーキーの九里亜蓮。

ありささんは、大学時代の九里の投球をノートパソコンで確認しながら、テレビ中継の九里の投球も見るという「ガチ勢」の見かたをしていた。

学生時代からの成長を知っている選手がドラフトで指名され、贔屓球団に入団してくる…。

プロ野球の醍醐味を感じられる玄人の見方だと、関心した覚えがある。




■ビジター球場で働くという経験

もし、プロ野球が大好きで、大学進学などで上京する機会があれば、ビジター球場で働いてみるのもいいかもしれない。

特に神宮球場は大学野球の聖地として、他の球場とは違う特徴があり、「選手が育っていく面白さ」をより体感できる場所だ。


ビジター球場で働くという経験…そこには、

「いち球団のファン」

から

「プロ野球全体のファン」

として、

「よりプロ野球を楽しむ」ことができる“宝物”が埋まっている。















選手の数だけドラマがあれば、
ファンの数だけドラマがある。









※追記
ありささんは、7/30神宮球場のナイターで1日限定で売り子復活されるようです。現地のカープファンは「前田智徳タオルの売り子さん」を見かけたら、「敬意」を表してビールを一杯頼みましょう!

※当サイトは「カープ」と「カープ選手」だけでなく「カープファン」の活動を応援しています。読者の周りに「こんな人いるよ!」という情報があればコメント欄や、twitterのほうに連絡を下さい。



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